大会長挨拶

第24回学術大会のテーマは「緩和ケアのArt & Science」としました。日本緩和医療学会は1996年に設立され、同年に第1回の日本緩和医療学会学術大会が柏木哲夫先生を大会長として開催されました。この学術大会は、ホスピスケアやターミナルケアで発展してきた患者のQOLを尊重する考え方を、終末期に限らずがん患者の全経過へ適用していくこと、そして、医学の進歩に即応する専門性を持った緩和医療・緩和ケアの確立と発展に向けての船出であったといえるでしょう。

基調講演「パリアティブ・メディシンの構築に向けて」の中で柏木先生は、「真の緩和医療には“考え方、心”と“知識、技術”という2つの中心が必要」であり、どちらかに偏りすぎると緩和医療がいびつになると述べられ、今後の緩和医療の方向性を示唆されていました。
また、「症状のコントロール:疼痛管理」のセッションでは、並木昭義先生が、近い将来に学会として疼痛緩和のガイドラインを作成、エビデンスを創出していくことを提言されていました。つまり、発足当時より日本緩和医療学会は、緩和医療・ケアの科学的な発展Scienceと緩和医療・ケア提供、実践のArtの側面を大切にされていたことがわかります。

学会創設から24年が経過し、この間に、緩和医療や緩和ケアを取り巻く社会環境は目覚しく変化しました。2002年にはWHOの緩和ケアの定義が改訂され、緩和ケアの提供時期ががんの診断の早期からとなりました。2006年に成立したがん対策基本法やがん対策推進基本計画により「がんと診断されたときからの緩和ケア」が推進され、国を挙げて緩和ケアの普及に取り組むようになりました。また、緩和ケアを提供する対象も、がん患者だけではなく非がん患者にも拡がり、提供する場所も施設から在宅へと変化を遂げています。
このように、緩和ケアの提供時期、対象、場所が変化しても、私達は、緩和医療、緩和ケアの科学的な発展Scienceと緩和医療・ケアの実践Artの側面を緩和ケアの両輪ととらえ、バランスを考えながら病む人に適応していく必要があるのではないでしょうか。

以上から、第24回の学術大会においては、緩和医療、緩和ケアの多様なニーズに応えるために、学問としてScienceの発展と、それを医療者提供する際のArtについて学術大会参加者の皆様とディスカッションをできればと思います。皆様のご参加をお待ちしております。

第24回日本緩和医療学会学術大会
大会長 荒尾 晴惠
大阪大学大学院医学系研究科

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